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金融転職市場2011

金融転職市場2011

T金融のいま

1.主要証券の8割 減益・赤字 4〜6月期 株の売買低迷直撃

主要証券20社の2011年4〜6月期決算では、東日本大震災後の株式・債券市場の環境悪化が直撃し、野村ホールディングスなど4社を除く8割の16社で最終損益が減益・赤字となった。各社は売れ行きが好調な海外運用の投資信託販売に力を入れて法人部門などの落ち込みを補ってきたが、「投信依存」の構図も限界に近い。先行きの市場環境も不透明感が強く、コスト構造見直しが急務だ。
震災後に企業の資金調達が落ち込んだことも証券各社にとっては痛手。日本企業の新株発行額は前年同期比57%減、社債発行額も同32%減となり、法人向けビジネスの主要な収益源である引き受け手数料が落ち込んだ。
大和、赤字94億円
大和証券グループ本社は最終損益が94億年の赤字(前年同期は11億円の赤字)と、2四半期連続の赤字だった。個人向け子会社である大和証券は投信販売の増加で黒字を確保したが、法人向け子会社の大和証券キャピタル・マーケッツ(CM)の赤字(184億円)を補えなかった。
同社は大和証券CMと大和証券の合併などで費用を削減すると共に、法人部門の人員を個人部門根度に振り向け、立て直しを図る。
野村HDは増益
一方、最大手の野村HDは純利益が7.7倍の177億円だった。個人向けの投信販売や資産運用部門が好調だ。グループ資産管理会社である野村土地建物を完全子会社化したことが会計上、税引き前利益を243億円押し上げた。
法人部門は低迷
もっとも野村も法人向け部門の税引き前損益は148億円の赤字と、4四半期ぶりに赤字に転落した。欧米財政懸念などで世界中で投資家リスク回避の姿勢を強めたためで、今後1〜2年かけて法人向け部門で年間4億ドル(約320億円)のコスト削減に着手する方針を表明。中川執行役は「方法は検討中だが、あらゆる選択肢を排除しない」と述べ、人件費削減に踏み込む可能性を示唆した。
証券各社の収益環境は不透明さを増している。7月以降は株式市場の売買代金が一段と縮小しており、大和の岩本副社長は「日本株ビジネスの収益環境は数年前の好調な状況には二度と戻らないだろう」と指摘する。投信販売以外にも収益源を多様化すると共に、人件費を含めて費用削減が不可避となっている。

主要証券20社の2011年4〜6月期決算
(単位億円、カッコ内は前年同期比増減率%、▲は赤字または減少)
純営業利益 最終損益
野村 13,567 (2倍) 677 (▲7,081)
大和 810 (27) ▲94 (赤字拡大)
三菱UFJ 602 (▲9) 168 (▲26)
SMBC日興 555 (▲2) 40 (▲63)
みずほ 440 (▲20) ▲85 (赤字転落)
岡三 146 (▲7) 0.2 (▲99)
東海東京 126 (▲5) 5 (▲78)
SMBCフレンド 126 (▲11) 21 (8)
みずほインべ 119 (▲10) 9 (▲65)
SBI 92 (▲15) 19 (▲50)
マネックス 50 (▲21) 5 (▲56)
楽天 47 (▲20) 7 (▲61)
岩井コスモ 45 (10) ▲1 (赤字転落)
松井 41 (▲31) 10 (▲47)
丸三 36 (▲8) 0.1 (▲82)
いちよし 35 (2) ▲1 (赤字転落)
東洋 32 (18) 0.3 (黒字転換)
カブコム 27 (▲22) 5 (▲50)
水戸 23 (▲5) ▲2 (赤字縮小)
極東 19 (0) 3 (25)

2.三菱UFJ証券とSMBC日興  最終減益に 市況低迷で(4〜6月期)

三菱UFJ証券ホールディングスとSMBC日興証券は、2011年4〜6月期連結決算では、ともに純利益が前年同期に比べて減少した。株式市況の低迷が響いたほか、企業の資金調達の落ち込みで法人部門が苦戦した。両社とも投資信託の販売が安定して伸びているが、それ以外の部門の収益力低下を補えなくなっている。三菱UFJ証券HDの純営業収益は9%減の602億円。希望退職募集などで費用削減に着手したが収益減少を補えず、営業損益は32億円の赤字と四半期連続の赤字だった。シンガポール関連会社の株式売却益(123億円)を特別利益に計上したが、純利益は168億円と26%減少した。
SMBC日興の純営業収益は2%減の555億円。投信販売手数料やトレーディングは堅調だったが、株式委託手数料が減少した。三井住友ファイナンシャルグループの傘下入り後に法人部門を自前で強化しているため、人件費などの販管費が12%増加。純利益は40億円と63%減少した。

3.ネット証券5社減収減益(4〜6月)株の売買低調

大手ネット証券5社の2011年4〜6月期決算では、個人投資家の株式売買が低調で委託手数料が落ち込み、5社すべてが前年同月比減収。純利益もそろって大幅減益になった。各社は投資信託や外国為替証拠金取引(FX)等の品ぞろえやサービスを拡充し、収益源の多様化を進めているが、株式市況の低迷が長引く中で厳しい経営を迫られそうだ。
4〜6月は電力不足や円高などを受けて企業業績や株価の先行き不透明感が強まり、個人全体の株式売買代金が27兆円と16%減った。ネット証券5社の収益の柱である委託手数料収入も軒並み2〜3割程度減少。投資信託販売などの募集・売り出し取扱手数料も松井証券を除く4社で2〜4割減った。
1〜3月期と比べると、最終損益は松井証券とマネックス・グループが増益となり、楽天証券とカブドットコム証券が黒字に転換した。顧客が震災後の株価指数先物・オプション取引では巨額損失を抱えたのに伴って1〜3月期に計上していた貸し倒れ引当金がなくなったためだ。

大手ネット証券5社の11年4〜6月期業績
(単位億円 カッコ内は前年同月比増減率%)
純営業利益 純利益
SBI 92 (▲15) 19 (▲50)
マネックス 50 (▲21) 5 (▲56)
楽天 47 (▲20) 7 (▲63)
松井 41 (▲31) 10 (▲47)
カブコム 27 (▲22) 5 (▲50)

4.四大銀の4〜6月 三菱UFJ最終益5000億円モルガンを連結で 三井住友、最高益に迫る

大手銀行4グループの2011年4〜6月期の連結決算では、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は米モルガン・スタンレーの連結子会社化に伴なう臨時利益という特殊要因で、連結最終利益が約5000億円と前年同期比3倍に急増。四半期ベースで最高益となった。三井住友FGも最高益だった前年同期に迫る2066億円。3月にシステム障害を起こしたみずほFGは35.6%減の大幅減益で、高コスト体質の是正が急務だ。
不良債権処理損が減少
大手4グループは三菱UFJ,三井住友、みずほ、りそな。連結最終利益の合計は前年同期比49%増の8668億円となった。けん引役は四半期ベースでの過去最高益を更新した三菱UFJで5005億円の最終利益を計上した。
モルガン・スタンレーの連結子会社化という特殊要因を除いた実質ベースも2099億円で、26.2%の増益となった。米国の銀行子会社の不良債権処理が一巡し、連結ベースでの不良債権処理損失が前年同期の541億円から189億円へ大幅に減ったのが主因だ。
三井住友も連結最終利益も最高益を記録した前年同期(2118億円)にほぼ肩を並べた。
大震災の影響では経営が悪化する取引先が増えれば、与信費用も増加すると懸念されていたが、むしろ三井住友では取引先の経営改善で不要になった引当金などを利益計上する「戻り益」が発生した。企業倒産の減少に加え、政府による企業の資金繰り支援策が後押しした面もあった。4グループ合計では、前年同期に123億円だった不良債権処理損は428億円の「戻り益」に転じた。
国債等債券売買も予想以上に膨らんだ。三菱UFJと三井住友は1〜3月期の債券売買益が100億円未満に留まり、今期も低水準で推移すると見ていた。しかし長期金利の低下で三菱UFJが前年同期とほぼ同水準の743億円、三井住友も前年同期比22.5%減の582億円を確保した。
みずほは36%減
3メガバンクの中で見劣りが否めないのがみずほだ。連結最終利益は前年同期比で35.6%減の963億円。システム障害による直接の影響は、顧客のコストを負担した「数億円」にとどまったが、預金と貸出金の利ザヤなどから得る資金利益は5.5%減少。経費率も三井住友の46.9%に対し、みずほは59.1%と10ポイント以上高い。
先行きについては、4グループとも、慎重な姿勢で一致している。被災地の復興の遅れに加え、欧米の財政不安も影を落とし、先行きの不良債権の処理費用が膨らむ懸念がくすぶる。

大手4銀行グループの2011年4〜6月期決算
(単位億円、カッコ内は前年同期比%、▲は減少)
実質業務純益 不良債権
処理損失
連結純利益
(4〜6月期)
三菱UFJ    2721 (1)    138 (4)    5005 (3倍)
三井住友 2060 (▲6) ▲313 2066 (▲2)
みずほ 1423 (▲34) ▲166 (2倍) 963 (▲36)
りそな 726 (8) ▲87 (2倍) 633 (▲6)
4グループ合計 6936 (▲10) ▲428 (―) 8668 (49)

5.邦銀融資 上期7割増 インフラ整備・資源開発 欧米銀縮小で存在感

インフラ整備や資源開発事業向け融資で邦銀の存在感が高まっている。大型の事業に融資する「プロジェクトファイナンス」で2011年上期(1〜6月期)の3メガ銀行が主幹事でまとめた案件は計103億ドルと、前年同期比7割増えた。
市場は回復基調にあるが、金融規制の強まりで欧米銀行が業務を縮小。デフレ下の低金利により、国内の利ざやが薄くなっている3メガ銀が攻勢を強めている。
トムソン・ロイター社がまとめた順位表(リーグテーブル)よると、11年上期の世界のプロジェクトファイナンス市場規模は前年同期比横ばいの約961億4000万ドル、案件数は8%増の248件だった。地域別では前年同期に大型案件があったアジアで反動減と
なったが、電力関係案件が増えた米州が補った。
三菱UFJが2位に
3メガ銀行合計の世界シェアは10・7%と、前年同期から4.5ポイント上がった。このうち三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が主幹事でまとめた案件は前年同期比67%増の35件で金額は85%増の45億1300万ドル。インド商業銀行最大手のステート・バンク・オブ・インディア(18件、101億2万ドル)に次ぐ2位で、邦銀としては過去最高となった。
三井住友FG11位から7位(29件、31億8900万ドル)に、みずほFGも18位から12位(26件、25億8200万ドル)にいずれも順位を上げた。
邦銀が手がけた案件の地域別シェアでは米州が3割弱と最も高く、アジア・オセアニアと欧州・中東が1削弱だった。三菱UFJはカナダのシェールガス権益取得案件などが寄与して米州で首位をとった。三井住友は欧州・中東地域が堅調で、アラブ首長国連邦の太陽光発電所建設案件を獲得。みずほはインドネシアのアルミナ精製案件を獲得した。
国内より利益大きく
邦銀がシェアを上げている一因は、自己資本規制の強化に備えて一部の欧米銀行が事業を縮小していること。プロジェクトファイナンスは低収益とされているが、日本勢にとっては国内の大企業向け融資よりは利ざやが相対的に大きい。
各行は引き続き体制を強化しており、11年通期でも10年実績を上回る可能性がありそうだ。三菱UFJは英RBSから人員を受け入れ、アジア地域を中心とする取り組みを強化する。三井住友は北米に「中南米室」を設置して案件の掘り起こしを目指す。

6.外資系証券大手の前期決算 8社が最終赤字・減益

外資系証券大手10社の2011年3月期決算は、ドイツ証券、BNPパリバ証券など6社が最終赤字だった。黒字を確保した4社も2社が減益で、営業収益も8社が前期を下回った。機関投資家の日本株売買で日本企業の新株・社債発行が細るなか、外資系が強みを持つ法人向け証券業務で収益を上げづらくなっている。
メリルリンチ日本証券の最終損益は775億円の赤字(前期は221億円の黒字)だった。業績不振が続いていた金融子会社の株式を減損処理し、646億円の会計上の一時損失が発生したことが主因。本業では債券トレーディング益等が減少した。
ドイツ証券は収益見通しを下方修正したことに伴って繰り延べ税金資産を取り崩し、503億円の最終赤字(前期は23億円の黒字)になった。トレーディング損益が悪化した。
最終黒字を確保したゴールドマン・サックスも株式売買手数料などが落ち込み減収減益。バークレイズ・キャピタル証券も純利益は5600万円に留まった。
一方、モルガン・スタンレーMUFG証券は純利益が224億円と、769億円の最終赤字だった前期から急回復した。株式・債券のトレーディングが堅調だったほか、10年3月期に計上した証券化商品の評価損や、日本法人を設立した際に発生したのれん代の償却がなくなったことも業績改善につながった。

外資系証券大手の2011年3月期決算
社名 営業収益 最終損益
ゴールドマン・サックス    1108 (▲42)    181 (373)
モルガン・スタンレーMUFG    805 (102)    224 (▲769)
ドイツ    738 (▲11)    ▲503 (23)
JPモルガン    693 (1)    92 (23)
バークレイズ・キャピタル    585 (▲13)    0 (87)
メリルリンチ日本    554 (▲14)    ▲775 (221)
クレディ・スイス    450 (▲13)    ▲98 (▲206)
UBS    421 (▲39)    ▲20 (214)
シティグループ    356 (▲58)    289 (179)
BNPパリバ    342 (▲27)    ▲17 (142)

7.国内資産運用会社 2010年度末残高22兆円 海外マネー受託4割増  日本の技術力に注目

国内の資産運用会社が海外から受託する日本株運用が急速に回復している。2010年度末の海外マネーの受託残高は22兆5200億円と前年比4割増えた。野村アセットマネジメントなどの大手は東日本大展災後もアジアの政府系ファンド(SWF)や年金基金から受託。長期投貢の海外マネーが震災後の株価急落で生じた割安感や日本企業の高い技術力に注目し日本株の見直し買いに動いている。
日本証券投資顧問業協会が運用会社の海外顧客からの受託残高を集計した。
残高の増加は2年連続。海外からの受託の中心は日本株の運用だ。海外マネーの受託は06年度末をピークに欧米の金融危機や日本株相場の低迷で減少傾向にあったが、ここにきて持ち直しが鮮明になっている。
高い経済成長で運用資産が拡大するアジアの投資家から日本株運用を任されるケースが目立つ。
野村アセットは震災後にアジアのSWFなどから10億ドル(約800億円)近い追加運用を受託した。「日本株に割安感が出る中、銘柄をうまく選別すれば高い運用成果が見込めると判断したようだ」(国際業務部の市村部長)
4月以降も海外マネーの受託は続き、DIAMアセットマネジメントは公的年金から100億円強の運用を受託した。5月に東南アジアの運用会社から日本株ファンドの運用を託された日興アセットマネジメントは「震災でアジアの人々は日本企業が世界経済に占める重要性を強く意識した」(機関投資家事部の大都氏)と指摘する。
「自前では日本株を運用していた海外投資家が日本株に強い運用会社に任せるケースも出てきた」(大和住銀投信顧問の一条専務 )との声もある。同社は10年度中に米国に本部を構える国際機関の年金基金から、日本の中小型株の運用契約を獲得した。
ある大手運用会社は受託した資金の投資先として「自動車や機械など新興国で売り上げを伸ばす企業」を挙げる。「日本のクリーンエネルギー技術に注目する海外投資家も多い」(DAIMアセット)。運用会社の海外マネーの受託拡大は日本株相場の下支えになっいる。
東京証券取引所によると、外国人投資家の日本株売買は5月下旬に30週ぶりに売り越しに転じた。米景気の回復ペースの鈍化や日本の政局の混迷を受け、ヘッジファンドなど短期運用が中心の投資マネーが売りを出しているとの見方がある。
年金など長期投資スタンスの海外勢は「今年度後半の復興需要や株高を見込んで新規の投資資金を預けてきている」(DAIMアセットの国際営業推進の奥田部長)との声が根強い。

8.株式発行市場が正常化 新規上場再開 今年4割増 製造業復活、投資意欲戻る

東日本大震災後の混乱で停滞していた株式発行市場が正常化しつつある。6月は約2ヵ月半ぶりに株式の新規公開が再開。震災直後に見合わせた成長資金の調達に乗り出す企業が、増えており、今年の新規上場企業数は前年を4割近く上回る見通し。発行市場の回復は企業のM&A(合併・買収)や海外投資を後押ししそうだ。
6月は新たに6社が上場する予定。9日には非鉄金属加工のクロタニコーポレーション、29目には当初予定していた4月の上場を震災で見送った温度センサー製造販売のSEMITECが上場する。1〜6月の新規上場企業数は13社と、前年同期比で1社増える。
2011年通年では30社程度と前年実績(22社)を上回る見通し。震災前の見通し(40社程度)に比べるとペースは落ちるが、「事業環境の変化を見極めるために上場時期が遅れるのが主因で、新規上場や資金調達への意欲は落ちていない」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の磯橋公開引受部長)。
公募増資も復調
震災直後は機関投資家の需要が急減し、4月は2社が計画していた上場を中止。19年ぶりに月間の株式新規公開がゼロとなった。6月に入り製造業の生産体制の復旧が進みヽ投資家の警戒感が和らいだことから新規上場を再開しやすい環境が整いつつある。
上場企業の公募増資も復調する兆しが出てきた。
スカイマークが最大182億円、住友軽金属工業も最大109億円を調達する。スカイマークは国際線に役人するエアバス社の「A380」の購入資金、住軽金は米アルミ圧延会社の買収資金に充てる。発表後に1株あたり利益が薄まるのを嫌って株価は下落したが、「
長戦略に資金を投じる姿勢は評価できる」(銀行系の投信投資顧問゛と受け止める投資家が増えている。
資源関連で需要
5月に公募・売り出しを決めた企業はボルテージやオリックス不動産投資法人等5社。前月比で2社増えた。
上場企業による11年1〜5月の公募・売り出し金額は1兆I043億円。前年同期を2割程度に回るが、発行市場の機能回復に従い、資金調達に動く企業が増える可能性がある。
原油高や東京電カ福島第1原子力発電所の事故に伴い、権益確保を狙う資源・エネルギー企業の間で資金調達ニーズが高まっている」 (大手証券)という。市場関係者の間では「震災で止まっていた資金調達が再開すれば、企業が成長投資をするきっかけになる」(野村証券)との声がある。

9.買収ファンド 資産売却が最高 4〜6月6.9兆円 M&A増え投資回収

企業や事業を買収して再生・転売する投資ファンドが資産売却を加速している。2011年4〜6月の売却額は850億ドル(約6兆9000億円)以上と四半期ベースで過去最高の見通し。株価回復や資金余力のある企業によるM&A(合併・買収)の拡大で転売の環境が改善。投資回収が可能になった。海外M&Aを積極化している日本企業も有力な買い手となっている。
英調査会社プレキンによると、4〜6月の資産売却額(公表ベース)は5月24日までにこれまでの最高だった10年10〜12月の813億ドルを突破。四半期ベースで最高になることが確実になった。前年同期比では6割増。昨年末から高水準の資産売却が続いている。
売却資産の業種には産業機械やIT(情報技術)、医薬、小売りが目立つ。地域別では欧州が7割弱、米州が3割弱を占める。
投資ファンドは05〜07年の「買収ブーム」時に投資を活発化させたが、08年の金融危機発生で株価が下落。投資回収が難しくなった。株価が回復.したため転売、新規株式公開IPO)を通じて投資資金を回収している。
一般に投資ファンドの運用期間は5年。金融危機前に立ち上げたファンドの運用期限が迫り、回収を急いでいるファンドも多い。以前に比べ資金を集めにくくなっているため、投資家に着実に資金を返済し、新たなファンドヘの出資獲得につなげる思惑もあるようだ。
今年最大規模の案件は武田薬品工業が5月に発表したスイスの製薬企業ナイコメッドの買収。欧州系ファンドのノルディック・キャピタルなどが05年に買収していた。東芝が5月に発表したスイスの電力計大手ランデス・ギア買収も投資ファンドからの株式取得になる。

10.財政懸念 国債揺らす 欧州で保証率上昇 格下げリスク意識 市場、是正を迫る

2011.8.12
欧州の財政悪化に対する警戒感が金融市場で高まっている。フランスやドイツの国債の信用リスクを示す「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)サの保証料率が急上昇。足元では各国の国債は買われているが、国債を大量に保有する金融機関の株価が急落し、金融システムヘの不安が強まっている。11日の欧州株式市場では英独仏など主要国の株価が乱高下した。
欧州各国が財政悪化を止める道筋を早期に示せなければ、市場の混乱が広がる恐れもある。
フランスのCDS保証 CDS保証料率の上昇料率は10日に急上昇した。仏5年物国債の保証率は過去最高の1.7%を付けた。格付け会社が仏国債を格下げするとの観測が浮上したためだ。
CDS保証率の上昇は、比較的財政が安定しているドイツにも波及した。独5年物国債の保証率も0.8%台と過去最高水準に近づいている。格下げで米国債への関心が高まったが、足元では再び欧州の「ソブリンリスク」へ向かっている。欧州の中核国である独仏の財政問題が警戒されるのは「欧州の財政不安がイタリアやスペインにも飛び火し、独仏の救済負担が膨らむ」(野村証券の松沢中チーフストラテジスト)との懸念があるためだ。
欧州株は乱高下
財政への懸念が金融システムヘの不安を高める兆しが出ている。とりわけ金融機関の株価を押し下げている。
11日の欧州株式相場は朝方は上昇したが、フランスの大手銀行株が下落に転じると一斉に下げ足を速めた。フランス株が前日比3%超、ドイツ株も同2%超下落する場面があった。主要株価の終値はそろって上昇したものの、不安定な値動きが続いた。
仏国債の格下げ懸念が広がった10日には、ギリシャなど南欧諸国の国債を多く保有する仏ソシ工テ・ジェネラルの株価が一時20%以上下落した。仏国債の格下げが現実になれば、主に独仏の信用力に依存する欧州金融安定基金(EFSF)の機能が大幅に低下し、ギリシャなどの財政破綻の可能性が高まるとの連想が働いた。
日本も1%超え
もっとも国債への資金流入は続いている。ドイツ10年物国債の利回りは前日比0.19%低い2.17%となった。格下げ観測が流れたフランスも買われ、10年物の利回りは3・06%と同0.16%低下した。ただ、CDSの保証料率が上昇を続ければ、投資家が市場環境が悪化したと見て、国偵売りにつながる可能性がある。財政の悪化懸念は日本も同じだ。日本の保率も8、9日に1%を超え、過去最高水準の1.16%に迫っている。「投貴家が日本の悪い財政状況に再び目を向け始めた」 (バークレイズ・キャピタル証券の江夏ディレクター)日本国債が近く格下げされるとの見方もある。

国の財政悪化懸念が高まると…

国債の格下げリスク高まる

CDS保証率が上昇

投資家、国債売りも(長期金利の上昇)

国債保有する金融機関の経営悪化

株価下落や景気減速懸念

11.金融新規制  自助努力促す危機対応 信託・証券、監視に穴も

「カストディー銀行を発火点とする金融不安が起きかねない」。オバマ米大統領と米議会が政府の債務上限問題で攻防を繰り広げていた7月上旬、主要国の金融監督当局に緊張が走った。
ステート・ストリートなどカストディー銀行と呼ばれる巨大な信託銀行は、各国の国債や社債といった有価証券を数百兆円規模で管理する。米国債の債務不履いわれた巨大金融機関の債務不履行(デフォルト)が現実に起きたら、利払いの有無によって米国債をひとつずつ仕分けする作業が必要になる。最悪の場合には管理システムが一時停止して米国債が決済不能に陥りかねず、混乱が世界中に波及すると懸念された。
28社以外に伏兵
主要国の監督当局は連携して28の巨大銀行を監視するとともに、予防的措置として自己資本の上乗せを要求。金融危機が起きた時は「『大きくてつぶせない』といわれた巨大金融機関の秩序立った清算を可能にして倫理の欠如を防ぐ」。規制議論に加わった保険監督者国際機構の河合美宏事務局長は指摘する。リーマン・ショック後に相次いだ公的資金による救済への反省だ。
だが、新規制で金融危機再来を防げるのか疑問は残る。ひとつが先のカストデイー銀行。有価証券の管理業務は寡占化か進むものの、監視対象の28社に入らない銀行もある。商業銀行.や投資銀行のように巨額の利益や損失を計上することもなく、当局にとってほとんどノーマークの存在だった。
穴はそれだけではない。「経営危機に備えた経営再建計画を早期に策定してほしい」
日本の金融庁は最近、世界の28社に入る3メガ銀行に伝えた。再建計画とは万が一の経営危機に備え、自助努力で経営状況を回復させるための危機対応計画で、公的資金に頼らない破綻処理原則の根幹をなす。
3メガ銀は危機時に非中核業務の売却や、いかに自己資本や預金を獲得するか具体的かつ詳細な計画を示す必要がある。
野村は自衛急ぐ
当局関係者らによれば、3メガ銀よりずっと先行する格好で、野村ホールディーングスが詳細な再建計画を日銀に提出したという。野村は世界の28社の対象から外れたばかりか、同社経営陣は「28社に入るメリットは何もなく、ビジネスには間違いなくマイナスに働く」と言ってはばからない。その野村がなぜ金融新規制の原則に従うのか。
「証券会社の危機対応制度を整備すべきだ」
大手証券の経営危機が2008年の欧米の金融危機の発火点になったことを教訓に、金融庁では09年に大手証券を対象とした公的資金の注入制度の議論が起きた。銀行を対象にした預金保険法の危機対応措置を大手証券にそのまま適用できないためだが、結局は「世論の理解が得られない」として議論を封印した。
いざ危機に陥ったら、最後の貸し手である日銀の特融に依存するしかない。野村が再建計画を真っ先に日銀に渡したのはこうした事情も背景にある。日銀は1997年の山一証券の破綻で1000億円超の特融か焦げ付き、大手証券救済には慎重とされる。
欧州に端を発した国債の格下げドミノは、政府の債務危機から、国債を保有する金融システム危機に発展する懸念をはらむ。新しい金融規制は金融システムの穴を完全にふさいだとは言い切れない。

巨大28銀行の危機対応の流れ
巨大銀行
・健全性を維持しているか当局が監視
・経営再建計画や破綻処理計画の策定・見直し
危機時
・自己資本による損失処理
・経営再建計画を実行し、資金調達やリストラ
・資金繰リなど当局が監視強化
破綻時
・当局が破綻処理計画を実行し、資産凍結や受け皿選定へ
・債権者が損失負担
・破綻の連鎖防止へ当局が連携強化
破綻が連鎖し、金融危機に
・公的資金Eより危機を封じ込め
・中央銀行が資金供給

12.生保、銀行窓販頼み鮮明 保険料の16%(2011年4〜6月)

戸別訪問販売、転機に
生命保険会社が銀行窓□での保険販売への依存度を高めている。国内生保8グーループの2011年4〜6月期決算では、保険料収入に占める銀行窓販の割合が16%に達した。
窓販が全面解禁になった直後の08年4〜6月期に比べて約5倍の水準だ。職員の戸別訪問を基本としてきた生保の営業が転機を迎えている。
銀行窓販の割合が最も高かったのは明治安田生命保険だ。銀行窓販を経由した保険料収入は4704億円と前年同期比2.27倍に増えた。収入全体に占める比率は43.5%に達した。最大手の日本生命は従来の戸別訪問を重視している姿勢を示しているが、それでも窓販の比率は11.1%と、初めて10%を超えた。外資ではプルデンシャルグループの窓販比率が14.4%と最高だった。
銀行窓販の売れ筋は預金と保障の中間的な商品である「一時払い終身保険」だ。預金に比べて利回りが高い点が受けている。個人向け国債やゆうちょ銀行の定額貯金が満期を迎える際の受け皿として、銀行員が勧めている。
ただ、銀行窓販が業績の不安定要因になる例も出てきた。住友生命保険の保険料収入は5779億円と同52.5%減った。前年同期に好調だった一時払い終身保険「Jロード」の窓販を休止したためだ。金利が低下して収益性が落ちたためだが、窓販頼みのリスクも浮き彫りとなった。富国生命保険も一時払いの定額年金保険の窓販を抑え、減収を余儀なくされた。
過度の銀行窓販依存にはリスクも伴う。銀行は保険を顧客に販売する際に保障機能よりも預金の代替としての利点を強調する傾向が強い。金利が上がってくれば利回りが一定の一時払い終身保険の魅力が相対的に下がるため、解約が殺到する可能性もある。
国内生保8グループに外資大手5グループを加えた13グループの4〜6月期の保険料収入は1.9%減の6兆2026億円、基礎利益は41.8%増の5561億円となった。住友、第一生命などで変額年金の運用損失に伴う一時的な費用が大きく減ったことが利益水準を押し上げた。
株価低迷によって6月末の国内株の含み益は1兆7406億円と3月末に比べて28.7%減った。
富国生命とプルデンシャルグループ、アリコを除く大半の生保で含み益が減少。6月末の日経平均株価は9816円だったが、8月12日終値は9000円割れの水準にある。足元では三井生命保険などが含み損に転じた可能性もある。

主要生保の2011年4〜6月期業績
(単位億円、カッコ内は前年同じ期比増減率%、▲はマイナス)

保険料等収入 うち銀行窓
販比率(%)
基礎利益
日  本    13,569 (18.7)    11.17    1,287 (▲0.5)
第  一    7,992 (▲7.6)    5.40    780 (93.9)
明治安田    10,821 (36.3)    43.50    870 (40.3)
住  友    5,779 (▲52.5)    8.17    753 (317)
T&D    3,843 (0.D)    2.40    333 (319.8)
三  井    1,425 (▲10.7)    0.29    10 (−)
富  国    2,384 (▲17.2)    27.60    181 (25.5)
朝  日    1,219 (▲2.4)    6.32    52 (7.8)
アリコ    3,279 (18.6)    -    93 (▲60.D)
アフラック    3,653 (12.9)       488 (7.6)
プルデンシャル    4,524 (10.7)    14.43    335 (▲3.2)
アクサ    1,592 (2.8)    13.00    187 (16.7)
ソニー    1,946 (6.6)    0.77    192 (62.)
合  計    62,026 (▲1.9)    -    5,561 (41.8)

(注)アリコとアフラックは銀行窓販比率非開示

13.大手損保5.4%減益 大震災は準備金で対応(4月〜6月)

大手損害保険3グループの2011年4〜6月期連結決算が12日出そろった。3グループ合計の純利益は1052億円と前年同期に比べ5.4%減った。海外の自然災害に伴う保険金支払いが増えたほか、円高で海外収益が目減りした。東日本大震災関連の支払い負担は3月末までに積んだ支払備金を取り崩して対応しており、今決算への影響はない。
売上尚に当たる正味収入保険料は合計1兆7561億円と横ばい。主力の自動車保険は保険料の引き上げで0.8%増収だったが、自動車損害賠(自賠責)保険の収入は3.6%減った。
各社は震災関連の支払い見込み額として、前期に2000億円超の支払備金を計上した。今期は支払いが本格化するが、前期に積んだ備金を取り崩して対応する。
グループ別では、MS&ADインシュアランスグループホールディングスの純利益は前年同期比7.9%減の381億円、東京海上ホールディングスは2.2%減の551億円、NKSJホールディングスは10.2%減の120億円たった。

大手損保3グループの2011年4〜6月期決算
(単位億円、カッコ内は前年同期比増減率%、▲はマイナスか赤字)

正味収入保険料 最終損益
MS&AD    6,490 (▲0.7)    381 (▲7.9)
三井住友海上    3,179 (1.8)    186 (12.9)
あいおいニッセイ
同和
   2,704 (12.9)    162 黒字
転換
東京海上    5,989 (0.5)    551 (▲2.2)
東京海上日動    4,420 (0.6)    695 (5.8)
NKSJ    5,082 (0.7)    120 (110.2)
損保ジャパン    3,277 (▲1.0)    33 (▲67.0)
日本興亜    1,608 (0.4)    68 (▲9.2)
合 計    17,561 (O)    1,052 (▲5.4)

(注)あいおいニッセイ同和は合併前会社の前年
同期業績の単純合算値と比較

U金融人材の需給状況

概況
東日本大震災以降、我が国及び米欧の先進国、並びに新興国の経済に下ぶれリスクが起き、8月米欧の財政危機により世界経済は先行き不透明さを増している。この環境要因が、当然のことながら日系金融機関及び日本に拠点を置いた外資系金融機関の収益状況にマイナスに働き、金融人材の需給状況もそれを反映している。
失業率は我が国のみならず欧米でも高止まりしており、金融人材市場は外資系・日系金融機関ともに人材需要は総じて低迷したままだ。現在でも採用をフリーズ、あるいはリストラを継続している金融機関もある。

  1. 外資系金融機関(銀行・証券会社・資産運用会社・ヘッジファンドとプライベート・エクイティ等の投資会社)の従業員数はリーマンショック以前の28,000人から23,000人余と減少した。東京市場の金融拠点としての劣化により、外資系はさらに一段と組織撤退あるいは縮小したりして今後20,000人以下に落ち込む懸念がある。
  2. 失業者・転職者の状況は、年齢層では40代のシニア層が25%で最も多く、次いで30代ミドルが20%を占める。
    金融プロダクト別では、最も多いのはグローバルマーケット(債券、為替、クレジット、コモディティ、株式、及びデリバティブ、調査)で40%を占め、次に企業金融25%、PB/リテール5%が続く。
  3. 外資系金融機関は我が国の金融市場にデリバティブ関連商品を導入して投資銀行業務をリードし、同部門に相当数の金融プロフェッショナルを投入してきたが、リーマンショック以降環境の激変によって同部門に対する東京市場における外資系の役割は終えた。言いかえれば、当該業務は以前のような収益を挙げられなくなってきたのが理由だ。
  4. 我が国の大手金融機関が本格的な投資銀行業務に参入する気配。しかしながら、メガバンクは依然としてリスクを執らない経営体質を温存したままであり、それ故、リスクあっての投資銀行業務に本腰を入れることは難しいだろう。野村証券がリーマンの部門を買収して、グローバルな投資銀行化を目指し、組織、給与制度を変革しているが、旧来の野村プロパーとリーマン人材を融合できるか、野村のグローバル投資銀行化の成否が問われている。

金融ビジネス別人材需要状況
(当該情報の一部についてエグゼクティブ・サーチ・パートナーズ社のデータを参考にさせていただいた)
概要
1.金融の「稼ぐ力」劣化
「金融機関の成長見通しが後退しつつある」。バークレイズ・キャピタルのストラテジスト、バリー・ナップ氏は、金融株の見方を強気から中立に引き下げた。
市場に高まるのは、金融の稼ぐカヘの懸念だ。主要500社の利益を見ると、2007年1〜3月は全体の30%を金融が稼いだが、11年10〜12月は17%。自己資本利益率(ROE)も伸び悩む。好況期はROE15%が当たり前だったが、ナップ氏は12年にようやく10%が見えるとの見立てだ。リーマンショック、その後の各種規制装置、米欧諸国の巨額の財政赤字などにより世界経済の先行き見通し難。
こうした環境下で金融機関の成長鈍化の見通しを覆すだけの積極的戦略を打って出られるのか、世界景気の不透明さから現時点ではそのような兆候は見られない。したがって外部からの人材採用を通じて組織を強化していく機運に欠けている。
2.投資銀行ビジネスモデルの衰退
リーマンショック後、外資系金融機関が今まで収益の源泉としていた投資銀行モデルが崩れた結果、収益の低下を招いている。多くの金融プロフェッショナルを採用していた当該部門での人材需要は一気に萎んでいる。
3.東京の金融マーケットの地位低下
外資系は在日拠点の廃止・縮小に向かい、主要機関でも強力な組織展開を図っていく機運は見られない。したがって外資系の人材需要の大幅な回復は望めない。
4.日系金融機関のリスク回避
日系金融機関はリスク回避傾向が強く金融ビジネス本来のパワーを削いでいる。日系金融機関の付加価値力は、米欧金融機関の収益力(ROE,ROA)と比較すると著しく劣っている。グローバル競争に打って出るだけの気構えが感じられず、積極的な組織戦略を展開するための金融プロフェッショナルの採用も本腰を入れる機運にない。

1.投資銀行ビジネス

主要な外資系金融機関及び日系金融機関の投資銀行ビジネスは総じて堅調を維持した。2010年の世界のM&A総額は前年より12%多い2兆2470億ドル(184兆円)で3年ぶりに増えた。企業業績が上向く中で、資源・エネルギー分野をはじめ大型買収が動き出し、アジアなど新興国企業の買収も目立つ。主要国の金融緩和で企業が資金を手当てしやすくなったこともある。円高で日本企業による海外企業の買収も増えている。ただ、東日本大震災後は、その勢いは弱くなっている。
当該部門への人材需要は往年のような強い需要が見られないが、一部外資系トップクラス、日系メガバンク、証券トップクラスでは高度な金融プロの人材需要があった。
(1)M&A
世界のM&Aの復調、海外に活路を求める日本のM&A案件増加に伴い、主として国内金融機関やM&AブティックからグローバルM&A経験者の人材需要があった。外資系でも若手の人材需要が見られる。この傾向は続くと見られる。
(2)引受(株式・債券)
日本企業による株式での資金調達は、件数で増加、金額ベースで減少。金融機関では三井住友FGやみずほFGの大型増資があったが、全体の株式発行額は減少。一方、大手事業会社の株式発行は、国際石油開発や東京電力の大型増資など高水準となった。東日本大震災以降大分回復してきた。
このような状況から、外資系・日系ともに、グローバル金融人材の需要が高まり、若手及び経験豊かなシニア人材を求める動きが目立った。
社債発行額は大きく減少。その中で、社債の引受幹事ランキングは、国内証券会社の寡占状態にある。外資系はデリバティブを組み込んだ収益性の高いものに絞っている。それ故、日系・外資系ともに、社債発行とデリバティブの両方の経験を有するプロが求められている。
(3)IPO
IPOは件数ではピーク時より低迷したままだが、金額ベースでは大幅に増加した。第一生命と大塚HDの大型IPOが占めた。成長分野での新規上場は相変わらず見るべきものは無い。IPOの人材需要は殆ど無かった。オリジナリティに富んだベンチャー企業のIPOの兆しが見られる。この面でのベンチャー精神を持ったプロの人材のニーズがある。ただ、最初から魅力的なコンペンセーションは期待できない。
(4)カバレッジド・バンカー
シティグループが日興コーディアル証券業務の一部を三井住友銀行に譲渡したことに伴う外部人員充当が見られた。外資系シニアバンカーの退職に伴う人材補充があったが、全体として外資系投資銀行で活発な人材需要が見られたわけではない。
日本企業も潤沢な手元資金を使って引き続き国内、海外企業のM&Aを積極的に展開して行く流れだ。この面からM&A関連の金融プロの需要が見込まれる。
顧客企業が投資銀行を選定する基準は、主幹事、メインバンク、グローバルネットワークや調査分析力といった要素に加えて、顧客企業のニーズに即座に対応でき、独自の提案力を発揮できるかも重要だ。この面から、求められる人材とは顧客企業に対して資本政策全般について的確な提案ができるプロフェッショナルである。当該基準をクリアできる人材は限られている。日系・外資系ともにこれらの人材ニーズは強い。

2.プライベート・エクイティ(PE)

PEはリーマンショック以降、低迷している。日本企業に対する投資会社のM&A金額は前年より増加したが、ピーク時から3分の一に過ぎない。外資系ファンドの人材需要は低迷している。国内ファンドが中小企業の買収に動いているので、この面でソーシングやファンドレイジングのポジションで人材需要が見られる。

3.不動産関連

10年の不動産関連ビジネスは一部注目案件もあった。CMBSの組成があったほか、注目案件として、ブラックストーンによるBNPやモルガン・スタンレーの不動産関連資産の取得やメリルリンチの不動産投資ファンドの取得があった。
日銀のJ-REIT購入の動きからJ-REITの増資が活発で有力な物件取得に投資資金が流れている。
欧米投資家の日本での不動産市場の地位は低下しているが、東南アジア、中東の新興国の投資家が日本での投資を活発化させている。
東日本大震災以降、不動産関連ビジネスの機運が萎んでおり回復には時間がかかる。したがって、当該分野の人材需要もあまり期待できない。

4.債券ビジネス

(1)フロー債券
東日本大震災及び米欧の財政危機を要因として世界経済の停滞懸念が高まり、世界の株価が大きく下落している。投資マネーは安全資産である債券市場に向かっている。
メガバンク、生損保、年金、地域金融機関は国債・公社債の保有比率を高めている。円債の購入では、生損保等の機関投資家が長期国債の購入を増やしており、外債の購入でも邦銀や大手生保も外債投資を増やしている。これにより国内・外資系大手証券会社は、国債、米国債、欧州国債といったフロービジネスの対顧客トレーディングで大きな収益を上げた。
しかし、日本の長期国債の利回り反転や、米国の財政赤字拡大、米国債の格下げによる米国債の利回り上昇で、メガバンクや生保、地銀・信金の一部では大きな損失を被った。
従来、外資系証券が日本国債のマーケットメーキングを独占する傾向があったが、最近では国内大手証券が巻き返しを図ろうとする動きが見られる。本国通貨に換算する場合、急激な円高が外資系には大きなマイナス要因だ。外資系が短期収益志向を強める中、コスト面からフロントを若年化させる傾向が強い。国内金融機関にとっては外資系金融機関とのメガコンピティションの差を縮める好機だ。
このような状況下でフロー債券ビジネスは、グローバルマーケット部門での強力な収益源であり、債券トレーダーやセールスのプロの人材需要がある。当該ポジションの人材需要はこれからも期待できる。

(2)仕組み債・仕組みローン
欧米諸国の財政危機、米国債の格下げ以降、複雑な仕組み商品や運用の中身がブラックボックス化している商品は市場性が無くなった。代わりに単純な商品、明確な商品には富裕層の投資家の購入がみられる。外資系金融機関がリテール投資家向けの仕組み商品の卸売りを積極的に展開し、そのため国内販売会社宛のマーケターや仕組み商品のストラクチャラーの人材ニーズが見られたが、外部採用までには至らず社内異動により充当している。

5.株式関連

(1)株式
今夏の欧米諸国の財政危機、新興国の成長鈍化を要因として、世界の株価乱高下により株式保有から安全資産である債券への移動がみられる。世界経済の先行き不透明さから当分の間、この傾向は続くと見られる。
このような環境下でも、一部の証券会社に株式部門を強化する動きがみられた。日興コーディアル証券が三井住友FGの傘下に入ったが、シティグループからの譲渡に株式部門が含まれなかったため、日本株のアナリストやトレーダーを採用した。また一部の欧州系大手投資銀行が同じ欧州系証券の日本法人の株式部門全体を買収した。
一方、個人投資家のアジア株購入意欲は強く、国内証券各社は当該ビジネスを拡大・強化している。中堅国内証券会社では、リテール向けにアジア株セールスポジションで外部採用機運が高い。

(2)株式調査
一部の金融機関が日本株アナリストを採用した。まずは日興コーディアル証券がシティグループからの譲渡で株式部門が含まれていなかったこと、及びシティグループとの提携解消に対する措置である。
もうひとつは、外資系金融機関での若手アナリストの大量採用である。世界の機関投資家はアジア株の分散投資のため日本株のシェアを回復させる必要がある。海外の機関投資家が、購入株式の選定で外資系投資銀行の日本法人を選定しており、外資系証券会社で若手アナリストへの人材需要が見られた。 ただし、東日本大震災以降、世界経済の先行き不透明さによる株式から債券への資産の流れから日本株アナリストの採用は一段落している。

6.ヘッジファンド

10年第四半期のヘッジファンド資産残高は1.490億ドルと過去最大のペースで増加、その結果、資産総額は1.9兆ドルと08年半ばの水準まで回復した。
ヘッジファンド投資を控えていた機関投資家が投資を再開している。大手年金基金の内、3割程度がヘッジファンド投資を増やす方針に転換したといわれる。この動きを受けて外資系大手ヘッジファンドが投資資金の獲得のための拠点を設ける動きもあったようだ。
金融危機の反省から「リスクテーキングは悪だ」という風潮がある。その流れに沿って世界的な規制強化策が図られている。しかしながら、金融ビジネスは本来リスクを執ることから始まる。経済発展はイノベーションやリスクテーキングで実現する面もあり、世界にはリスクを選好する投資家もいる。この面から「リスクマネー」のニーズに応える業態が必要だ。投資銀行やヘッジファンドの役割は欠かせない。

7.プライベート・バンク(PB)

日本の金融機関や外資系PBが個人富裕層に対する資産運用組織を強化拡大している。今後も引き続き当該ポジションの人材ニーズは拡大すると見られる。 従来はプロダクト担当と顧客を持つリレーションシップ・マネジャー(RM)が求人対象であった。最近では投資対象が多岐にわたることから、金融商品に対する幅広い専門知識とグローバル市場を見通せる能力を備え、富裕層宛にポートフォリオのアセットアロケーションの提案ができるプロへのニーズが高まっている。

8.資産運用

(1)投信ビジネス
10年末の国内公募投信の純資産残高は前年比4%増の63兆7,201億円で2年連続の増加だった。年間では前年の2倍にあたる6兆213億円の資金が流入したが、これは21カ月連続の流入超であり、個人マネーの投信への流入が続いていることを示している。しかし、円高と米欧の財政危機の影響を受けて運用のパフォーマンスは悪化しており、残高は流入額ほど伸びていない。こうしたことから投信関連の人材需要は減速した。
投信人材需要の動きは外資系運用会社による日本市場への新規参入に伴う採用や日本進出間もない知名度が低いが優良な運用会社による求人があった。海外資産で運用する投信の購入需要は引き続き強く、運用を行っている外資系運用会社での人材需要が引続きあった。公募投信残高の4割を超える海外債券等で運用する外貨建て運用商品に対して資金流入が続いており、当該商品開発やマーケティングのポジションでの人材需要があった。中長期的な拡大が見込まれるノーロード投信を多く扱うインターネット銀行や証券チャネルへの営業力強化を行った運用会社もある。
一方、外資系金融機関では少人数による販売会社への対応や海外との英語でのコミュニケーションが必要なことから、当該資格要件をクリアできる人材ニーズがあるが、なかなか的確な候補者がいないのが現状だ。

(2)年金/機関投資家ビジネス
10年3月末での日本の年金資産残高は約272兆円。世界で2番目の規模だが今後の日本の人口減少の推移から先細りすると言われている。従って今後年金ビジネスのパイの奪い合いが加速するに連れて、当該ポジションのプロの奪い合いが激しくなると見られる。
年金基金や銀行・生損保等の金融機関向けセールスのポジションの採用ニーズがある。
最近、年金コンサルティングの重要性が見直されていることから外資系を中心にRFP作成や年金コンサルティング宛リレーションシップ担当のポジションで求人があった。

(3)運用部門
日本株のファンドマネジャーやアナリストに対する人材ニーズは殆どない。プロダクトマネジャーの採用では、外国株、外国債券、オルタナティブ投資の経験者が採用されるケースがあった。国内運用会社のアジア拠点でアジア株運用のプロの採用があった。

(4)オペレーション部門
オペレーションのアウトソーシングの動きは、コスト削減の観点から加速して行くとみられる。
外資系・日系を問わず、投信計理、投信レポーティング、約款・目論見書作成、パフォーマンス分析、コンプライアンスなどで人材採用があった。退職者の補充目的もあった。
09年後半より続いた再編によるリストラクチャリングの中で、所期の目的に対応した組織改編が行われた資産会社では、新しい戦略に基づいた人材ニーズがある。
資産運用業界においても年齢層の偏りから各社とも30才代の中堅層の確保が急務である。特に海外経験を有する若手へのニーズが逼迫している。

9.人材需給ニュース

(1)英HSBC、米195店舗売却
英銀行最大手のHSBCは、米ニューヨーク州を中心に展開するリテール(小口金融)部門の195店舗を地元地銀に約10億ドル(約770億円)で売却すると発表。米欧メディアは、HSBCによる約1万人の人員削減も報道。採算性の低い米事業の見通しや全社的なコスト削減を通じ収益力を高める。
195店舗はニューヨーク州を地盤とするファースト・ナイアガラ・バンクに譲渡。ファースト・ナイアガラは1900人の従業員を引き受けるほか約150億ドルの預金で約28億ドルのローン債権などの譲渡を受ける。2012年初めをめどに手続きを完了する見通しだ。

(2)今年2度目の希望退職 三菱Morgan 300人以上を見込む
三菱UFJモルガン・スタンレー証券は10月に今年2度目となる希望退職を募集する。全社員の4%強に当たる300人以上の応募を見込む。同社は2010年3月期にデリバティブ関連の取引で多額の損失を出し、今期も株式市況の低迷で苦戦している。収益の立て直しに向け、一段のコスト削減が不可避と判断した。
7月から社員への告知を始めた。10月に募集し来年1月末が退職日。応募者は割増退職金を受け取るほか、再就職支援会社のサービスを会社負担で利用できる。
前回(今年2月)の募集では主に40歳〜57歳の総合職が対象だった。今回は年俸契約の専門職など一部が対象外だが、全社員の9割に相当する約5千人から幅広く募る。人数に上限は設けないが、少なくとも前回(約270人)を上回る応募を想定しているようだ。
同社は前期、トレーディング損失が発生して1449億円の最終赤字を計上。同時に策定した業務改善計画では、2月募集の希望退職と定年退職などの自然減で約750人を削減して、今期末の人員を6200人程度にする方針を示していた。しかし足元の厳しい収益環境を踏まえて再度の希望退職の募集を決断。今期末の人員を6千人以下まで減らし、人件費の抑制を目指す。

(3)英バークレイズ M&Aの助言業務強化 投資銀の人員日本で4割増
英大手銀行バークレイズは日本の投資銀行部門を拡大する。同部門の人員を昨年9月末の48人から 約4割増やし7月末までに70人体制とする。日本企業が東日本大震災後も外国企業を積極的に買収していることに対応する。
来日したダイヤモンド最高経営責任者(CEO)はM&A(合併・買収)の助言など投資銀業務を強化する方針を明らかにした。同氏は「買収の機会に関する問い合わせを多くの日本企業から受けている。日本でのM&A業務は伸びる」と指摘。「我々は日本で14年間、少しずつ事業を拡大してきた。日本市場への熱意は震災後にむしろ増している」と語った。

以上  

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