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サブプライム問題の教訓
21世紀型バブルが崩壊

高度な金融技術の発達に伴い、リスク軽減を図ることにより、リスクマネーが自己増殖し、そのバブルが崩壊するメカニズムは必然となる。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題は契機にひとつに過ぎず、今回の本質はリスクテークバブルが崩壊したことにある。サブプライムローンで起きたバブルの仕組みを検証して、21世紀型の金融市場の危機の本質を議論する。


1.住宅価格上昇前提の仕組み

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今回の市場の混乱に関し、「サブプライムローン問題に端を発した金融危機であり、証券化の進展でその危機が見え難く制御不能となっている」との議論がなされている。だが今回の危機の本質は、サブプライムや証券化ではなく、古典的なバブルの生成と崩壊だ。金融市場が発展して資本が増大し、金融技術が進歩すればするほど、逆説的に、バブル発生と崩壊は恒常化し、金融市場の本質となる。
サブプライムローンのスキームを支えたのが、住宅価格の上昇である。住宅価格が上昇すれば、借り手はローンを借り換え、再び低金利からスタートできる。一方貸し手も、住宅価格が上昇すれば、誰に貸しても必ず回収できるので、ノーリスクで収益が得られる。住宅価格上昇は、サブプライム産業の発展に不可欠だったが、サブプライム拡大により、投資需要を含めた住宅需要が増えたことによるものだった。まさに自己増殖メカニズムであった。
証券化もこれを後押しした。サブプライム債権を証券化して、リスクとキャッシュフローをうまく組み立て直し、リスクの高い部分はヘッジファンドなどに、リスクの低い部分は年金などに、というようにそれぞれの投資家にマッチした金融商品に仕立て、金融商品としての価値を上げた。


2.リスクをなくすリスクの技術

今回の危機の原因として「いったん問題が生じると、この便利な証券化が逆に元凶となり、リスクが分散した結果、当局がリスクの所在を特定できず、他の投資家も、損失の拡大総額が見えないため疑心暗鬼になった」と証券化が批判されている。だが今回の危機の本質は証券化ではなく、サブプライム自体が世界を揺るがすこともない。そもそも日本は、米国サブプライム関連証券の投資が相対的に少ないにもかかわらず、株式市場の下落率は米国を下回った。
現実に起きているのは、急速な円高及びその裏にある円キャリー取引の収縮である。そひて、円キャリー取引の収縮とは、世界のリスクマネーの収縮の一例であり、本質はリスクマネーの収縮によるバブルの崩壊なのである。だが、これだけ金融技術が進歩し、世界の英知を集めたプロが投資する市場で、単純なバブルが起きるのか。逆説的だが、21世紀の金融市場においては、バブルの生成、崩壊がより劇的に且つ頻繁に起こることになろう。なぜなら、高度に発達した金融市場では、むしろ、バブルは必然であり且つ利益を出す必須アイテムだからである。
高度に発達した金融技術とは、リスクをリスクでなくすシステムだ。リスク資産をプールしてリスクを定量化し、それを分散して小口で売る証券化も、実体経済のリスクは不変だが、投資家のリスクは低減する仕組みである。つまり、個々の投資家がリスクを許容する分だけ、金融市場全体のリスクが低下し、金融商品の価格が上昇、リスクを許容した投資家は結果的にリスクなしで利益を上げることになる。リスクマネーがリスクを取ることにより、リスクをリスクでなくす。これが金融市場が発達する局面での富の増大の源泉である。証券化も株式会社の成立も株式会社が上場することも、本質的にはこの同じメカニズムだ。


3.リスクマネーの自己増殖願望

金融技術が発達して、金融商品価格が合理的と考えられると、投資リスクは低く認識され、大規模なレバレッジをきかせても安全な気がしてくる。こうしたリスクテークの連鎖でリスクは低下したと認識され、リスクマネーは膨張する。リスクテークバブルである。証券化はこのバブルを生んだひとつの手段だが、本質は、証券化という手段ではなく、リスクマネーの自己増殖願望にある。
そして、合理的であれ非合理的であれ、一定規模の投資家がリスクが高いと認識を変えた瞬間、このバブルは崩壊する。彼らがリスク回避に走れば、前述のリスクテークによる友の創出メカニズムが逆回転し、富が消失するのだ。融資してきた銀行などの債権者も必死で回収を図るため、崩壊メカニズムは加速する。
これが現在のサブプライムに端を発したリスク資産市場の状況だ。サブプライムはきっかけに過ぎず、世界中のリスクマネーが収縮し、低金利の円で資金を調達し、高金利通貨などの世界中のリスク資産に投資してきた円キャリー取引の巻戻しを引き起こした。その結果、急激な円高、ユーロやニュージーランドドルなどの高金利通貨の暴落となった。これに連動して、世界中の株価が暴落し、サブプライムとは最も無縁な日本の株式市場が世界で最も激しく下落することになった。


4.政策当局のスピーディな対応

ではこの危機にどう政策対応すべきなのか。最も重要なのは、スピード感を持って行動を起すこと。欧州中央銀行は即座に大量の資金供給を行った。米連邦準備理事会は緊急利下げを行った。
今回の危機は為替がカギであり、日本が動くことで日本と世界の混乱を救える可能性があった。金融政策も、金利を引き上げないでだけでなく、国際金融市場の混乱を何としても抑えるとのメッセージを世界に発信する必要があった。合理的であろうがなかろうが、何かのきっかけでパニックが何度も起こるリスクは当面くすぶり続けるからだ。
金融危機の際、倫理観や長期的な当局の信頼性を議論している暇はない。そうした議論を悠長にしていることこそ、政策当局としての信頼を世界から失うことになる。


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