未来志向の果敢な挑戦 起業文化とベンチャー創出へ

起業家精神こそが日本を変える Entrepreneurship :The Key for Japan's Revival

コンセプト:

  • 日本にベンチャー支援のインフラを作り、起業家精神を醸成して持続可能な経済、産業の発展に寄与したい。
  • 未来に向けて日本を支える原動力は起業家精神にある。
  • 日本の厳しい現状を直視しながら未来に目を向け、日本とシリコンバレーの連携や、産業界と大学、学会との連携の在り方を日米合同チームが一緒になって"未来志向"の骨太のソリューションを考える。
  • 起業家精神を持つ人が集まってビジネスを生み出す「ハビタット(生息環境)」という概念提起
    経済強化に起業環境の整備必要。イノベーション推進に戦略不可欠。駐日大使 ジョン・ルース氏

    第一に、日米同盟の基軸である平和と安全を守るために 日米共に経済大国であり続けること。国家経済を強くするには起業のための健全な環境が必要。第二に、日本での起業家精神は、国境を超えた投資を生み出し、各国に雇用をもたらす。第三に、地球温暖化をはじめ世界的課題解決に起業家精神は不可欠。グローバルにチームを組み世界に役立つ技術を開発していかねばならない。第四に、日米は相互に支え合うことで、より強いパートナーになれるから。

起業家精神の活性化につながる6つの点:

  1. 起業を称賛すること
  2. 失敗しても再挑戦のチャンスを与えること
  3. 有能な人材の流動とキャリアチャンスが不可欠
  4. 多様性の推進 米国は世界中から起業家を迎え入れ、人とアイディアの多様性が力を与えている。女性の力も重要な要素。
  5. グローバルな視野に立った価値観。世界的な影響力をもつ製品、技術、サービスかどうかを考える、ここから無限のチャンスが生まれる。人材もグローバルな連携が軸になってくる。
  6. 最後にイノベーションの推進には政府のコミットメントが必要。日本の独創性、情熱、そしてイノベーションが何をもたらすかは世界が周知の通りだ。

Ⅰアントレプレナーシップ醸成の要件1:リスクマネー・VC機能要件とEXIT戦略

VCの役割や、起業後のIPOなどのいわゆる出口戦略(EXIT)について、起業家の支援の在り方を考えると、産業支援機構は約9千億円の原資を投資活動に充てることが可能だ。大学が持つ私的財産の活用、ベンチャー企業の技術の展開、大企業の再編等の案件を組み合わせて新事業の可能性を追求していっている。
TOKYO AIMは東京証券取引所グループの新たな市場としてスタート。特徴は1.金融機関などプロの投資家が対象 2.指定アドバイザーが上場審査から上場後のフローまで担当 3.上場の際の数値基準を設けていない。従来の市場とは異なる上場市場として新たな資金調達やEXITの可能性を提供していきたい。
スタンフォード大学と東大が共同で取り組んだ日本の起業家精神に関する研究の成果は、過去10年で立ち上がった新興企業5万社を見ると、業種別には「卸売」を筆頭に「建設」「不動産」などが上位に挙がる。また業種別の平均売上高では「化学」「娯楽」「保険」「卸」の順。注目すべきは新興企業の立ち上がりにはあまりVCが関与していないことだ。VCの代替として政府や半官半民の機関の役割が大きいということかもしれない。
Q:日本ではリスクマネーがなかなか起業家に集まらない。
戦後日本は国を挙げて基幹産業を育成するため大企業に資本を集中させ、社員も大企業に入社すれば「ノーリスク・ミディアムリターン」が期待できた。これが基幹産業における起業家精神を失わせたのではないか。従来の延長線上でない方法論を基幹産業に持ち込み。起業家精神を鼓舞いしたい。

EXITのシナリオ実施を
Q:EXITについてはIPOのほかにM&Aと言う選択肢もあるが、米国と違い日本ではまだ注目度が高くないようだ。文化の違いだろうか。

ユニークな伝統に強み、大企業のA&D受け皿に
日本は明治維新や第二次世界大戦後の厳しい状況の中、政府指導で銀行が中心となって産業復興を支援し、成功してきた。このユニークな伝統をシリコンバレーの歴史と単純に比較できない。ただ言えるのは、カリフォルニアは政府の介入があまりない地域であるということだ。またシリコンバレーの新興企業の61%は移民によってつくられており、更に失敗後に再生しやすいという伝統がある。日本とシリコンバレー双方の伝統に着目しながら、日本の強みを理解する必要がある。
起業家にはEXITの方法を論ずる前にまず「自分たちの技術で世界にインパクトを与えたい」という熱意を持って欲しい。M&Aはあくまでもその結果だが、現在は大企業が自社のR&Dでなく戦略的なA&Dで新規事業を立ち上げる動きがあり、EXITの受け皿になっていることを紹介したい。

早い段階で資金調達を
Q:日本の起業家精神を醸成する方策は。
資金の出し手と受け手の「シンクロナイゼーション」を支援していきたい。東証1,2部やマザーズへのIPOに数年を費やすのではなく、AIMという新しい市場を活用してもっと早い段階で資金調達し、事業を成長させていただきたい。

健全なリスクテーク必要
日本にはお金がないわけではない。健在なリスクテーク、つまり計算されたリスクを取ることによってこそ新しい企業が作られ、そこに新たな投資機会が育っていくはずだ。

Ⅱアントレプレナーシップ醸成の要件2 起業家教育

Q:起業家教育とは何か。

失敗を迅速に受け止める
まず重要なのは拡張可能で持続性のあるビジネスモデルをスタートアップすることだ。起業家に必要なのは「ビジネスプラン」ではなく、「ビジネスモデル」。価格やユーザー、需要の創造、販売チャネルなどを考えることが起業家教育の基盤になる。教室を出て、だれに話を聞けばいいか、誰がビジネスパートナーになるかなどを実際に学ぶ必要がある。また必ずしも一番よい製品が勝ち残るわけではないことを知り、どういう環境の中でどうやって成長するかを考えなくてはならない。そして失敗を迅速に受け止めることが大切だ。ビジネスモデルの中にある問題を早期に認識できれば、新たなビジネスモデルに方向転換が可能だからだ。

「プルの教育」に移行を
現代はビジネス環境が変化するスピードが非常に速まっており、ゆっくり学んでから起業するのでは追い付かない。起業のためのルールを使って非常に早く学習しなければならない。そして起業家教育で大切なのは「何を教えるか」ではなく「どうやって教えるか」だ。スタンフォード大学には様々なプログラムがあり「バイオエシックス」プログラムもその一つ。ここでは工学、物理、法律などを学ぶ学生らを集めて専門分野ではない生命科学の分野に応用するには生命科学を学ぶ必要があるからだ。重要なのは、授業を受けるだけの「プッシュの教育」ではなく、学習しながらならないものを自ら見つけて学ぶ「プル教育」に移行することだ。

資金集まる好循環
基礎研究の分野は成果を事業化するのに長い時間がかかる。リスクマネーを導入してこの長さを埋めるのが大学発ベンチャーの取り組みだ。米国の大学発ベンチャーではVCのファンドの多くが成功した起業家が大学に寄付してできた基金を資金の源泉としており、又潤沢な基金を奨学金として活用することでいい学生が集まる好循環がある。これを日本でも作りたい。東大では6年前に「東京大学アントレプレナー道場」という期間6カ月のプログラムを設けた。ここに参加する理科系の学生が、自身の研究成果を事業化するというキャリアパスもあることに気づく。そんな効果も期待している。
Q:成功事例をモデリングすることも起業家教育の重要な要素だ。
製造業だけでなくサービス業にもロールモデルはある。今後2~3年の内に、優れた起業家を戦略的に支援して2~3人の素晴らしいロールモデルを作りたい。
モデリングは重要だ。厳しい状況を乗り越えて成果を上げる「モデルスルー」から学ぶべきことは多い。
スタンフォード大学がすごいのは、身近にロールモデルがいて「その気にさせちゃう」と言う教育だ。大学やビジネススクールが将来の起業家やマネジメントチームの出会いの場を提供する。大事なことだと思う。
ハビタットの中に多様な人材のネットワークがある。いわば、ふとした偶然方何か価値のあるものに気付く「セレンビティネットワーク」だ。
ある学生が私に数学の論文を送り「これで何かビジネスができるか」と聞いてきた。数学の学生が起業を目指すような大学はスタンフォードだけだと思う。こうした起業家精神がハビタット~生まれるスタンフォードは「夢を持つ能力を与える場」だ。
初代学長は東海岸から来て弁護士の教育を受け、鉄道事業を始めたり、上院議員や知事も務めたいわば「エンジニアインベスター」だった。現在の学生の意識の中にも、こうしたパイオニア精神が受け継がれている。またハビタットはいずれは日本でも育成されると思う。そのためには政府のリーダーシップ、企業のリーダーシップが重要だ。大学もまた、イノベーションに関わる動機づけが強く働くような構造改革が必要なのではないか。
東大エッジキャピタルではEXITの事例が目立ちつつある。こうした事例がロールモデルとなり、シリアルアントレプレナーがエンジェルとして後続の起業家に資金援助する好循環が始まることを期待したい。
いまシリコンバレーでは非常に少ない資金で起業できるようになってきた。この事例は日本にも希望を与えるのではないか。

日本的な起業家醸成を
シリコンバレーの仕組みをそのまま日本に持ってくるのは難しいが、しかし現在のいわゆる「東京一極集中」を良い方に活用し、日本的に起業家を醸成する道もあると思う。三菱地所が主導するプロジェクト「日本創生ビレッジ」では、現在、会員数う620人の「東京21Cクラブ」で様々な専門家が異業種交流し、また新丸ビルの10階にインキュベーションオフィスを設けて起業家に活動の場を提供している。「丸の内 インド・エコノミック・ゾーン」ではインド企業の日本進出を支援し、両国企業の出会いを通じてアントレプレナーシップを創出しようと試みている。
シリコンバレーに"生息"する日本人層も厚くなってきた。日本の大学や企業にはもっとシリコンバレーのインフラをもっと活用してもらいたい。
起業を後押しするヒューマンタッチな部分をいかにして起業家教育に盛り込んでいくかが重要だ。