最近の企業動向

外資系・日系主要業種の最近の企業動向は?

日本経済研究センター50周年記念セミナー 持続可能な開発へ戦略を

 日本経済研究センターは4日、設立50周年を記念し「持続可能な開発と企業の役割」と題した国際セミナーを開いた。基調講演では米コロンビア大のジェフリー・サックス教授が経済発展と地球環境の両立を訴え、木下雅之三井物産専務執行役員、澤田康幸東京大学大学院教授も交えたパネル討論で議論を深めた。司会は岩田一政・日本経済研究センター理事長。

 経済発展と環境両立  米コロンビア大学教授 ジェフリー・サックス氏
我々の経済発展は抜本的に環境を変えた。科学者は今の時代を「アントロポセン」と名付けた。ギリシャ語では「人間が創った地質学上の世紀」を指す。人類は多くの面で抜本的な変化を引き起こし、これまでの地球の循環には収まらなくなった。
 「地球上の境界」という言葉がある。地球の大気や生物系には、ある水準に境界線がある。例えば二酸化炭素(CO2)は既に境界を越えてしまったとも言われる。大量の氷床が溶けて海面が上昇し、沿岸部の都市は深刻な影響を受ける。CO2が海洋中に溶け出して、海洋生物への脅威にもなる。統計では地震件数は横ばいだが、人間が関係するとみられる洪水やサイクロンの件数は増えている。
 持続可能な開発には、経済繁栄を達成しつつ、一方では地球の境界線を越えない道を見つけなければならない。最も重要なのはエネルギー体系を変えていくことだ。例えば日本は原子力発電の是非が議論されている。多くの人は拒否するが、代替エネルギーはどうするかが問題となる。ガス、太陽光、火力をどう組み込むのか、大所高所から考えなければならない。
 世界は新しい戦略を求めている。今は短期的な危機に目を奪われ、長期的な視点を持てずにいる。貧困削減に重点を置いた「ミレニアム開発目標(MDG)」から、「持続可能な開発目標(SDG)]に移らなければいけない。
 民間企業の持つ技術は大きな役割を果たせる。官民連携も利用できる。透明性を高めること、科学的な活動方針を持つことが重要だ。米国ではロビーインクが政府を動かしているが、これは排除すべきだ。環境被害が起きたら、汚染者負担の原則を貫く。企業の説明貞任を強化し、秘密裏の活動はやめる。
 国連の潘基文事務総長に、[グローバルーナレッジ・ネットワーク]の構築を依頼された。エネルギー、気候、都市化、海洋などの専門家を全世界から集め、津々浦々に最先端の知見を行き渡らせ、問題に対処できる体制を作る。ぜひ日本にも参画してほしい。
 日本は非常に責任感の強い企業のリーダーを輩出している。もっとリーダーシップをとって持続可能な開発を実現してほしい。日本は世界有数の技術を持ち、省エネ技術は世界で最たるもの。公害対策を進め、日本は数十年前と比べて格段にきれいになった。日本の技術を使えば中国の街をきれいにできる。

人材育成へ官民連携  三井物産専務執行役員 木下雅之氏
 資源枯渇、環境、人口、貧困などの問題の解決には、政府や国際機関による公正で透明性ある政策的な枠組みの整備が不可欠。日ごろからリスクや財源の問題と向き合っている企業の知見や国際的なネットワークの力も発揮できる。
 持続的発展に直接寄与する当社の仕事は2種類ある。
 一つは貧しい国が自律的に発展できるよう支援する仕事。モザンビークで取り組む世界最大級の天然ガス田開発プロジェクトは、ガス田開発で同国に収益をもたらす。加えて、バランスのとれた発展に寄与しようと港湾開発や食糧輸入なども手掛けている。
 もう一つは経済発展が環境や資源の持続性に悪影響が出ないようにする仕事だ。マレーシアでのスマートシティーノ開発に取り組んでいる。現地の政府系不動産会社に資本参加し、20年かけてエネルギー効率が高く防犯機能にも優れた街づくりを進める。
 ただ、紛争を抱えている国での活動や経済性を伴わない新技術導入などは、企業では限界がある。企業と政府が協力し合い持続可能な開発に携わるうえで最も重要なのが人材の育成だ。洞察力、構想力、実行力を兼ね備えた人材づくりを社会全体で進める必要がある。

援助・輸出・投資 一体で 東京大学大学院教授 澤田康幸氏
 世界経済の重心は欧米からアジアやアフリカへ移りつつある。2030年には1日10~100ドルの生活水準を送る「中間層」の約66%がアジアに分布する見込みだ。人口は21世紀半ばから終わりにかけ、アフリカで増えると予測される。
 1970年代に世界の最貧国の一つと言われたバングラデシュでは、先進国からの海外直接投資を受け入れ縫製業が発達した。若い女性の雇用が増え、出生率の低下や教育格差の解消など社会資本が改善した。
 一方で、デモなど人的災害、ビル崩落など技術的災害、自然災害や経済危機といったリスクは残る。巨大リスクは市場メカニズムが働きにくく、予防や対処には公的な政府開発援助(ODA)が効果的だ。日本は防災先進国、環境先進国として果たせることも多い。
 援助、輸出、投資が一体となった取り組みは「ジャパンODAモデル」と呼ばれ、日本は特にインフラ分野で民間投資を誘発する傾向がある。
 貧困削減や初等教育の普及など8つの目標を掲げた「ミレニアム開発目標(MDG)」の達成期限が2015年に迫る。新目標策定で日本は積極的に貢献しなければならない。官民が連携し、民間の知恵を活用した具体的な手法を戦略的に提供する必要がある。

パネル討論―日本の役割 
 岩田一政・日本経済研究センター理事長:発展途上国の持続的な開発について、日本の企業はどのような役割を果たしているのだろうか。
サックス氏 システム全体を輸出
 ジェフリー・サックス・米コロンビア大学教授:木下氏と澤田氏のプレゼンテーションを聞き、官民連携が途上国の課題解決に向けた大きな力になることが分かった。例えば三井物産がマレーシアで進める「スマートシティー」開発は素晴らしいプロジェクトだ。
 先端技術を駆使してエネルギー効率を高めるだけでなく、人の暮らしにも配慮している。ここまでやり遂げられる企業は世界でも少ない。
 日本の成長は今後も輸出が主導するだろう。だがこれからの輸出先は新興国だ。スマートシティーは持続可能な開発であり、高度な技術が使われ、三井物産がこれまで蓄えたノウハウが込められている。多くの分野にまたがっている点が重要だ。
 モノや機械を売るだけでなく、システム全体を売るのが仕事。日本が優れている分野であり、世界が必要としている分野でもある。
 複雑なプロジェクトの中にODAを加え、民間資金と公的資金を投じながら双方が便益を得る仕組みが望ましい。
 岩田:持続可能な開発に日本が重要な役割を果たしているという一方、多様性の面で課題を指摘する声もある。
木下氏 現地に根差し多様性培う
 木下雅之・三井物産専務執行役員:ダイバーシティーという観点から、日本企業が他国に比べ遅れているのは事実だと思う。当社は商社なので海外拠点も豊富だが、真のグローバル化に向けてやれることはまだ多い。
 今年度はインドで携帯電話やパソコンから支払いができる事業を始める予定だ。インドは銀行口座の保有率が人口の約30%で、クレジットカード保有率となると3%程度。現状では現金決済が一般的だが便利な決済手段のニーズは高い。
 このように現地に根ざしたビジネスをいくつも手掛けるうち、内向きの思考も見直されていくのではないかと思う。
澤田氏 若者の挑戦 後押しを
 澤田康幸・東京大学大学院教授:日本は人口が多く経済規模も大きい。第1次から第3次までまんべんなく産業が発達している点で、海外より国内重視になるのは自然な流れだ。
 若者の内向き思考が指摘されるが、大学で学生に接する立場から見ると二分化している。海外に積極的に出る人は情報アクセスが得意でフットワークが軽い。身近な人を目標に、いつか追いつき、追い越したいと努力する。
 内向き思考の若者についても、東日本大震災からの復興や少子高齢化など国内にも課題はあるので必ずしも悪いことではない。リスクを取りにくい環境にあるなら、周りが是正して制約を取り除く必要がある。
 岩田:実は澤田教授は私のゼミの大学院生たった。優秀な学生だと思ったら米国に留学した。いまの議論で挙げられたような若い人の先頭を立っていて喜ばしい。
ジョン・F・ケネディは1963年、平和についての演説をした。「全ての問題は人間が作った」、そして「人間は欲すれば欲するほど大きな存在になれる」が有名なフレーズだ。このセッションを持続可能なものにするため、一人ひとりが人間としてできるだけ大きな存在になるというメッセージを受け取ってもらいたい。(日経新聞2013.6.12)

2013/06/12