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雇用業界グローバル化 人材派遣、舞台は海外。外資は日本国内を狙う

「インドでは近年、賃金の上昇が著しい。人件費が安いというイメージでの進出には注意が必要と留意してください」
 「インドネシアでは、社用車を持てるのがステータス。幹部人材は社用車を用意すると獲得しやすい」
 6月13日、東京都千代田区の総合人材サービス大手パソナグループ本部で、日系企業の海外事業担当者らを対象としたセミナーが開かれた。同社が海外拠点を置く中国、インド、インドネシアなど10地区の現地のスタッフらが、各国での採用や雇用管理の最新情報を熱心に語った。
 労働法制や雇用慣行は国ごとに多種多様だ。このため、日系企業が海外進出する際には、現地で人事管理ノウハウを蓄積した人材サービス会社と連携するケースが多い。現地人材確保のための職業紹介や駐在員の給与計算、労務管理などの仕事が発生する。
 パソナは昨年来、中国の蘇州、インドのグルガオンなどに新拠点を開設。昨年5月末で8地域29だった海外拠点は今年5月末、10地域34に増えた。
 国内が事業の主力だった日本の人材サービス業界だが、2008年のリーマン・ショック後、本格的に海外に目を向けることになった。きっかけはリーマン後に襲った「雇用危機」だ。
 雇用の調整弁として「派遣切り」が大量に発生。業界全体の売上高は、最盛期の7兆7千億円から10年度には5兆3千億円に落ち込んだ。「人材派遣へのネガティブなイメージが強まり、国内での高成長は望めない」というのが各社の一致した意見だ。円高などを背景とする事業会社の海外進出が、人材サービス業界の進出にも拍車をかけた。
 テンプスタッフも昨年以降、日系部品企業の進出や、開業時に必要な金融のわかる人材の需要増にこたえるため、中国の香港と広州、韓国の現地法人のそれぞれに1支店を増やした。
 技術者派遣最大手のメイテック(東京都港区)は、中国に的を絞る。日本語や日本文化が分かる技術者養成のための学校を西安と成都で運営。今年からは、技術指導ができる高レベルのエンジニアを日本から派遣する仕組みを導入した。
 成長著しいアジア地域では、日系企業の現地での人材確保を支援するために、「人材紹介」の分野で進出する人材会社が多い。しかし、そうした国々ではなく、米国に打って出ている企業がある。総合人材サービス国内最大手のリクルートだ。
 事業規模でみると、人材派遣では日本と米国はトップ2で、世界の約2割ずつを占めると言われる。リクルートは07年に国内で派遣最大手だったスタッフサービスを買収しすでに国内トップ。次に照準を合わせるのが米国で、昨年、人材派遣2社を買収した。売上高に占める海外の比率を13年3月期には現状の6倍近い20%に高める予定だ。
 峰岸真澄社長は5月の決算発表で、「将来的には、海外比率を50%へ。グローバルでナンバーワンの総合人材サービス企業にしたい」と意気込んだ。13年度にも株式上場を目指す方針で、資金調達力を高め、海外事業を強化する考えだ。
 一方、見逃せない動きもある。積極的に海外に走る日本勢とは対照的に、外資系人材会社はグローバル展開の中で日本での勢力拡大を狙っていることだ。
 業界では世界2位のランスタッド・ホールディング(オランダ)の日本法人が昨年7月、国内のフジスタッフ、アイラインと統合、日本への本格進出を果たしたことが話題だ。「日本は・衰退産業と成長産業の間の労働力の隔たりが大きく活躍する事業機会がある」とランスタッドの担当者は話す。
 世界1位のアデコグループの日本法人は、99年のキャリアスタッフ買収で日本での事業を本格化。最近は豊富な海外拠点網を活用し、日本から海外への人材の送り出しに力を入れる。
 5月からは在日タイ留学生協会と連携し、日本へ来た留学生が日本で働いた後、母国で活躍するキャリアパスを視野に支援していく。
 同社の担当者は「グローバル化が進むなか、海外から日本へ、日本から海外への双方向で人材をマネジメントしていく機能が求められている」と話す。

■日本の主な総合人材サービス会社の売上高
 会社名       売上高
リクルート      8066億円
テンプホールディングス2331億円
パソナグループ    1810億円
■世界の主な総合人材サービス会社の売上高
 会社名       売上高
アデコ(スイス)   213億ドル
ランスタッド(オランダ)173億ドル
マンパワー(アメリカ)167億ドル
リクルート(日本)   74億ドル

労務外部化の波に乗る
 人材サービス業界は1980年代以降、働く人たちの流動化や企業の労務管理の外部化の流れにのり、急速に拡大した。最近ではリストラの際に活用される「再就職支援」や若者向けの「就職支援」など、事業は様々な分野に広がる。それらの中でも主軸は人材派遣、人材紹介の2分野だ。
 「派遣」は、派遣会社と労働者が雇用契約を結んだ上で、別の企業へと労働者を派遣し、働かせる仕組み。派遣先企業は、労働者を雇う責任や社会保険料などの負担を負う責任がなくなる。派遣先企業から派遣会社に支払われる派遣外は、人件費ではなく物品費扱い。少しでも人件費を減らしたい企業の思惑とも重なった。
 「紹介」は、企業の求める人材を見つけ出し、紹介する事業レ紹介した労働者の賃金の何割かを紹介料として人材紹介会社が得る。労働者の賃金が高ければ高いほど、紹介料も高くなる。このため、専門性が商い高度な人材を対象とする場合が多い。

2012/07/02